TOPページ>恋愛コラム>第四十一回 「大学入学後に変わり果てて行く友人を追って-後編-」
第41回 「大学入学後、変わり果てて行く友人を追って-後編-」 4月18日執筆
200mほど離れた空き地に車を停車し、Y君の自宅の前に到着した私とN君ですが、いざ本人の棲家を
目の当たりにすると、それまでの確固たる意気込みがためらいに変わってしまいました。
一台の車が車庫にあり、6畳くらいの広さのプレハブ小屋と、2階建ての大きな一軒家が建っていました。
今回私がY君の家に赴いたのははじめですが、高校時代から何度か行き来しているN君によると、
Y君の部屋は、庭にそびえ立っている一軒のプレハブ小屋のようで、2階建ての母屋とは別離されて
いました。見方によっては完全に独立しているので、自分の世界に籠っているような印象を受けました。
「さぁついに来たけれど、で、どうするよ?」
と、お互い共通の思いがシンクロしているかの如く沈黙の時間が流れてしまいました。
時間にすると、3分間くらい呆然とY君の住まいを眺め続けるのにも倦んだ私たちは、いよいよ思いを
行動に移す時にやってきました。いざ現場までやってきたのに、このごに及んで引き返すわけにはいきません。
まずは、布石として「Y君、今日卒業式だったんだよね?何時頃こっち(地元)に帰って来るん?」
という、相手の出方をうかがう携帯メールを送信しました。
唐突に私たちが彼の家の目の前に来ている事実を突き付けると、後込まれてしまう恐れがあったので、
第一声は当たり障りのない探りの内容にしたのです。
N君と私は固唾をのんで返信を待ちましたが、15分経っても着信はありません。
もはやそれ以前から音信不通の日々が続いていたので、今回もいつものように、スルーされてもなんら
変哲はないのですが、私たちは今まさに彼のテリトリーに足を踏み入れていたのもあって、ここで諦めるわけ
にはいきませんでした。
「やっぱりメール返ってこないんだわ……絶対今頃卒業生同士で遊びに行ってる真っ最中だって」
と、諦観の見解を示したN君ですが、私は一面厚手のカテーンで覆われ、外部から遮断されているY君の
プレハブ小屋にある窓の奥がしきりに気になって、N君とは裏腹に、頓挫せずに一気にアプローチしたい
衝動に駆り立てられました。
メールで駆け引きなどしている場合でなく、電話にて単刀直入にY君に近づこうと意を決しました。
すぐさま思い切って電話をかけたのですが、数秒で留守番電話に繋がってしまい、私とN君でその後も2回
ずつかけたのですが、Y君と接触することはできませんでした。
結局、収穫はなしで、その日は撤収しました。
せっかくのチャンスですが、さすがに事前準備なしに行ったのもあって、本宅の呼び鈴を押してまで、
Y君の所在を確認する覚悟までは私とN君にはありませんでした。また、不審な男二人組が長時間家の前で
うろついていると近隣の住民に捉えられても、おかしくなかったので、切り札の電話が通じなかったことで、
これ以上長居は無用だと悟ったのです。
Y君の家に初めて直接訪問出来たこと、隔離されたプレハブ小屋の存在が脳裏に焼き付けられた
まま、悶々とした思いとともに私たちは後にしました。
その晩、私ではなくN君の携帯に、Y君からメールが届いたようでした。
「さっきは電話に出られなくてごめん。今日は卒業式が終わってそのまま帰って家で爆睡してました」
Y君は、私たちが訪れたまさにあの時間帯、家の中にいたのです。
もしかしたら、私たちが来ているのも承知の上で、カーテンの奥で私たちの動向を静観していたのかもしれ
ませんが、事実は知る由もありません。
大学の同期とも式が終わったと後、解散し、そのまま帰ってきたらしいのです。
そしてメールの最後で、"相変わらず就職先は決まっていない"という現実が付け加えられていたそうです。
その日を境に、私もN君も、また連絡がぴたりと取れなくなってしまいました。
2006年3月下旬の事でした。
そして、それから1年が経とうとしていてた2007年2月下旬。
私とN君はついにY君と再会を果たすことが出来ました。
この1年に及ぶ時間の中で、私は数十回電話をかけ続け、N君もメールを送り続けましたが、
たった一度さえも応えてくれることはありませんでした。
Y君の卒業式に、時を同じくして彼の家に足を運んだ私とN君は、互いにそれから環境が変わっても、
Y君の存在を脳裏から拭い去ることは出来ませんでした。あの時Y君が、自分たちの目の前にある自宅に
いたのにも関わらず、携帯電話での間接的な連絡方法でしか接触を試みなかったことに、後ろめたさ
を感じ、長い間引きずり続けていたのだと思います。
私は3月下旬から都内での就職を、N君は、5年間の大学生活にピリオドを打ち、同じく3月下旬から
県内での介護施設への就職を間近に控え、これからますます環境が変わって行き、連絡が取れな
くなることは目に見えていたので、社会に進出する前の、Y君と肩を並べられる最後の機会として、再び
この日Y君の住むあの家に向かったのです。
もちろん今回も事前連絡はなしのまま彼の家に赴く計画でした。
1年前のあの日、私とN君は携帯電話に頼ったまま、肝心のところで身を引いてしまったのを反省していた
ので、今回は勇気を出してすぐに本宅の呼び鈴を押しました。とはいっても、押すまではかなりためらいましたが、
「えーい、ままよ」と博打のような気分でいっぱいでした。
時刻は前回と同様の15時過ぎでしたが、私とN君の想像では、留守か両親のいずれかが出てくるもの
だと想定していました。N君によると、Y君は姉が一人いましたが、もう結婚しており、住まいも別々になって
いるそうで、親御さんの仕事環境など深い家庭事情まではN君も把握していなかったようなので、誰がドアを
開けてくるかドキドキものでした。
呼び鈴を押しておよそ1分でしょうが、足音が俄かにドアの方に近づいてくるのが分かると、勢いよくそこは
開きました。
「Y君の高校時代同じクラスメイトだった隆です」
ドアが開いた瞬間、すぐさまに向こうの相手にそう答えるつもりですが、あまりの予想外の展開が待って
いました。なんと、ドアを開けてくれたその張本人こそがあのY君だったのです。
大学2年の時以来、およそ4年ぶりに会うY君。
外見は、あの頃感じ取れたような精悍な雰囲気とはうって変わって、頬が痩せこけて、画面も長い間太陽の
光を浴びていないような蒼白さが目立ちました。
無地のブラックのトレーナーに、ダボダボのイージーパンツを身に纏い、ついさっきまで家の中で活動して
いた姿を彷彿とさせれるようなオーラーを一瞬にして受け取りました。
私たちも思ってもみなかった再会の形ですが、それ以上にY君は私とN君の存在に愕然としたようで、
声を発するよりも前に後ずさろうとしました。私もN君も、異口同音に「待って!」と呼びかけると、ようやく
Y君も観念したのだか、決まりが悪そうにドアだけを閉めて、玄関の先に佇みました。
隆&N君「久しぶり!」
Y君「ほんと、驚いた。まさか二人がここに来るなんて思ってもいなかったよ。しかも隆がいるなんて」
久しぶりのY君の口調は、高校当時と大差はありませんでしたが、突然のことに気が動揺していたの
かもしれませんが、覇気がないように感じました。そして私が自分の家に直接来たのがかなりの驚きだった
ようです。それもそのはず、N君はともかく私はY君の家で互いに顔を合わせたのはこれがはじめてですし、
かなり長い時間会っていなかったのですから。
N君「突然来て驚かせてしまって、ゴメンね。いやぁ、前から連絡してたんだけれど、Y君メールとか返して
くれないから、心配になってさ。隆と相談して直接会いに行くことにしたんだ」
Y君「ホントごめんね。携帯いつも見てなかったんさ。あまりいじってないんだよね」
携帯電話のメールや着信を見ていなかったとサラリと答えたのにはこちら側も衝撃を受けましたが、
ようやく会うまでにこぎつけられたので、このまま次のステップに進ませようと、話題を振りました。
隆「まじで会いたかったよ。話したいこといっぱいあったし」
Y君「そう言ってもらえるとホント嬉しいよ。俺も色々あってさ、隆とも話したかったんだけれど……」
N君「まぁここでの立ち話もなんだから、Y、こうやって久しぶりに高校時代の3人で堺再会出来たことだし、
これからドライブにでも行かない?」
Y君ともし再会できたら、そのままの流れで乗ってきた車に乗ってドライブに行きながら、喫茶店かファミレス
に寄って苦労話を吐露し合うような展開を描いていたのです。
しかし、この誘いの返答で、私は、私たちとY君との距離感、隔たりを痛感せずにはいられませんでした。
Y君「……それはちょっと難しいよ……」
さっきまでの笑顔が幻だったかのように、顔をうつむき、弱々しい表情に激変してしまいました。
それでも、この千載一遇のチャンスを逃すものかと、私とN君は思いのたけをぶつけます。
N君「気持はわかるけれどさ、この後なんか予定あるの?」
Y君「用事はないけれどさ、今宅配を待ってたところなんだ。それに出かけるのは……」
N君「だから、Yが出たんだ。でも、せっかく隆もこんな遠くまで来てくれたんだよ。Yに会いたいから。
Yは仕事が忙しいの?」
Y君「結局卒業してから仕事してないんだよね。たまに大学時代の友達から連絡が来たりするけれど、
気まずくて出られないんだ。みんな就職してて、俺だけ親のスネかじって生活してるしさ。」
この発言を聞いて、Y君が私たちの着信には気づいていないと言っていたのは虚偽で、これまで
電話やメールをいくらしても通じなかったのも、やっぱり自分たちと世界の差を感じていたからという現実が
分かりました。
彼の反応を見ていて、後ひと押しすれば、一緒に外に出られるかもしれなかったので、今ならY君の気持ちを
分かち合える自信があったので、さらに押しました。
隆「俺達もまだ就職してないし、将来に対する不安はかなりあるからさ。その辺の気持ちすごくわかるよ」
N君「隆も大学卒業できて俺も来月なんとか卒業出来そうなんだけれど、お互い大学はうまい具合にいか
なかったんよ。だからさ、Yの気持ち分かると思うんだ。話そうよ。30分だけでいいからさ、行こう!」
Y君「ゴメン……特に隆には遠くから来てもらって本当に申し訳ないけれど、やっぱり行けないよ」
これだけ誘っても決意は変わらないことで、Y君のどうしても外部には移動できない意思が伝わりました。
隆「分かったよ。突然だったし、無理言って悪かったよ」
Y君「ホントゴメンね。でも、また3人で絶対に会いたいね」
N君「いいんだよ。いきなりだったし。Yはいつも何して過ごしてるの?」
Y君「一日のほとんどは家の中で過ごしてる。インターネットかゲームしたりしてさ。そう言えば最近ヤフオク
はじめてさ。初めて落札したんだけれど、あれって面白いね。巷で手に入らない限定品のフィギュアとか
バラで買えたり出来るし、遠方の見知らぬ人と売買のやり取りとか出来たりしてさ。あと、最近ガンダムの
アムロ=レイのモノまねする芸人知ってる?ある深夜ラジオで毎週必ず出てるんだけれど、シモネタとか
しゃべったりしててマジうけるんさ。今度一度聞いてみて」
話題は一気に最近のマイブームの話へと移り変わり、意気揚々と話すY君の顔を見て、私は戦慄が
走りました。話している話題の内容と感覚が同級生と話しているというよりも、年下の後輩と話しているような
無邪気なノリなのです。この一節からも、彼が現在過ごしている世界の色が伝わってきました。
以前本の中で「引き籠りの人間が過ごす空間は、時間が止まってしまっている。だからいつか引き籠りを
卒業した時、彼らがどういった年代の人間に近づきたがるかというと、実のところ、引きこもりを始める前の
年頃のもとに歩み寄ろうとする」という件を目にしたことがありましたが、外見とは背反して、確かにY君の
精神年齢はこの一年かで完全に止まってしまっているような印象を受けました。
私が知る頃のあの知的で向上心に溢れていたY君は、もはや過去の人になってしまったのでしょうか。
隆「ところでさ、バイトもしてないの?Y君は頭が良かったし、真面目だから公務員とか合ってそうだけれど」
Y君「やってないんだ。バイトもいまさらね。大学時代に本屋でバイトしたことあるけれど、合わなくて2か月で
辞めちゃった。家は居づらいよ。父親は『いつか、就職したくなる日があるからその日が来るまで待ってる
からな』なんて、寛大なこと言ってくれてるけれど、お袋が毎日『引き籠ってないで、何でもいいから職に
就きなさい』って追い打ちかけてくるし。一日でも早く就職しないとなんだけれど、いざセミナーとかハロー
ワークに行くとなると……ね。もう卒業して1年経つし、どんどん就職出来なくなっている焦りは常にある
んだけれど、どうすることもできないまま日々が過ぎて行ってさ。公務員講座も大学2年の時に最初だけ
受けに行ったことがあるけれど、周りがあまりにもやる気にみなぎってて、それで一回で辞めちゃったよ。
考えてみたら、収入が安定してるとか、真面目な人向けだとか、断片的なイメージで公務員を捉えてて、
なんとなく志してみただけだったんだと気付かされてさ。現実は甘くないね。同級生で卒業して公務員に
なれたヤツがいて羨ましいけれど、ますます距離が開いていく虚無感はある。」
N君「でもさ、大学の時に就活とか一切しなかったん?」
Y君「実際面接とか会社説明会とか受けたことはないよ。トラウマがあるんさ。大学3年の冬に大学の就職
支援センターに、進路について相談に行ったら、担当者が最悪でさ。年配で、お袋よりちょっと年上の
おばちゃんだったんだけれど。その時は周りから『食品業界は不況とか関係なく、収入が安定してるから
オススメ』って聞いてたから、俺もいいかなって思ってその担当者に相談してみたら、『君は性格が
暗そうだから、そのままじゃどこの企業に行っても受け入れてもらえないよ』って一蹴されたよ。確かに
就職について甘く考えてたから、ダメージも大きかったけれど、人格を否定されたようで、それも図星
だからますますどうしたらいいんだか分らなくなってさ。結局それから今に至るまで何もせずって感じ。
ホントヤバイよね、俺」
怒涛のように流れるY君の本音を聞いて、返す言葉が見つかりませんでした。しかし、Y君は引き続き
Y君「もう23だし、このままじゃマズイし、親の目も日に日に厳しくなってるから、今度セミナーくらいは
行ってみようとも思っているんだ。それで、この間初めて就活スーツを青山で買って来たんだ。
まだ一度も着てないけれど」
一瞬だけ垣間見れた希望的観測でした。実際卒業後今までほとんど毎日家に籠ったまま、社会との接点が
皆無に等しく、モチベーションは日を増すごとに下がっていっているように思われましたが、それでも心の何処
かで「就職して社会に進出ないとまずい」という危機感があるようで、新しい一歩を踏み出そうとしているその
様は何よりの希望でした。私は彼を勇気づけるために、ここぞとばかりにあの話題を振りました。
隆「いい傾向じゃん。だって、高校時代Y君まじ頭良かったし。クラスでいつも1位の王座をキープしてた
くらいだし、どんなにテスト勉強頑張っても総合順位ではY君には勝てなかったよね。あの頃あんだけ
努力してたんだし、まだ卒業して1年しか経ってないから、まだどうにでもなるよ。」
Y君「確かにあの頃はまじで勉強頑張ってたな〜。あんなに勉強してたのも最初で最後かもしれない。
大学に進んでからは、あんまり経済に興味もてなかったし、周りの友達も大学院に進んだり、首席で
卒業するヤツがいたり、スゴイやつらばっかりだったから自信失ってたよ。実は大学3年の時、叔父
さんが不動産屋やってるからさ、宅建取ればコネで雇ってくれるって言ってるのを聞いて、俄か勉強で
受験してみたりしたこともあったんだ。でも高校の時みたいに、夢中になれなくてさ。全然ダメだった。
隆は良いライバルだったよね。あの頃が懐かしいな。大学院も興味はあるし、親も金は出してくれるって
言ってるけれど、興味があるの日本史くらいだしな……」
隆「大学院こそ今からでも遅くないよ。俺も大学卒業してから、別の大学の違う学科に1年進んだんだ
けれど、最初の大学で後悔している分、かなり充実して行って良かったって心から思ってるよ。出逢い
もたくさんあって人生リスタートを切れたような感覚だよ。大学は何度でもやり直しが出来るし、環境で
全然違うって実感した。それに大学院は大学受験みたいに、英国社の主要教科主体の受験方法じゃな
くて、偏差値も存在しないから、どれだけ興味がある学問があるかが合格の要になるんだし、Y君は昔か
ら日本史がずば抜けて得意で詳しかったから、合っていると思うよ」
Y君「そっかー、確かに俺も経済学部に進んで、離れていった日本史への思いが一層強くなったから、
大学院で日本史を学ぶのもいいかも。院なら本当に研究に没頭できるしね。よっしゃー!!
なんかやる気が出てきた!ありがとーー。まずはセミナーだ!」
彼の中で「高校時代努力して勝ち取った好評価」は今でも顕在しているようでした。そしてその経験が、本来の
自分のアイデンティティを保ち、と将来への自分らしい道を拓くための唯一の原動力のようにも感じられました。
Y君が当時の熱い思いを取り戻せたようなので、私たちは再会を誓って彼の元を後にしました。
帰ってみると、「俺は最高の友達を持って幸せです」というこれまでのわだかまりを吹き飛ばしてくれるかのような
メールが届いており、私もN君も、感慨に浸っていました。
そして、これが正真正銘、Y君と連絡出来た最後の瞬間になったのです。
2008年4月。あれから1年以上が経ちました。もはやY君は連絡すら許してくれません。
最後にメールをもらった翌日から、再び彼との音信は途絶えました。何度電話しても出るのは決まった
留守番電話の音声。現在は、着信拒否にされてしまったようで、一切彼の現況を知ることも出来ません。
あの日、あの姿は風前の灯だったのでしょうか。
今もまさに家に引き籠って明日を思い悩んでいるのでしょうか。
はたや、心機一転就職してバリバリ働いているのでしょうか。
全ては想像の領域でしか彼の”今”は描けませんが、長い間怠惰な生活に浸ってしまった人間は、
その独特な世界から脱却することが極めて難しい現実の引き籠りの生き様を、とくと突きつけられました。
Y君の発言の中から共通して伝わってくるのは、撃たれ弱さ、出逢いの無さでした。
大学生活は「自分らしい"何か"を見つけて羽ばたいていく学生」と「何もみつけられずにそのまま終えてしまう学生」
の2種類に分類出来ると、大学2年生の夏にはじめての就職セミナーの講師として来たリクルートの人事部担当の方
が言っていたのを今でも覚えています。
大学生活の中で人間にしても、勉強、遊びにしてもどれだけ自分にとって「かけがえなのないもの」に
巡り合えたかで、その後の人生が大きく変化するのは周知の通りですが、夢中になれる何かや、大きな逆境や挫折
に対峙せずに、その日その日を過ごしてきたY君は、結果として4年間で自立するための糧を培えずに、自分探しの
迷宮に足を運んでしまったのではないでしょうか。
そしてその発端として、高校時代の「とにかく極力楽して名の知れた大学に進めれば良い」という
モラトリアム的な考えにも、本来の自分らしさを見失ってしまった一因があるように私には思えます。
でも、若いうちは誰でも失敗はありますし、まだやり直しは出来るはずです。
今、高校時代の友人の一人として今や接触を拒否されてしまうほどの絶壁が立ちはだかってしまったのが
残念で仕方ありません。
この先彼と永遠に連絡を取ることは不可能かもしれませんが、いつの日にか自分の殻から脱皮して、
あの頃のように自分らしくその道に没頭する彼の姿を目にすることが出来る日を待ち望んでいます。
こうして振り返ってみると、傍から見れば、彼を見下して、批判しているだけのように感じられるかもしれま
せんが、決して他人事ではなく、私自身も大いに共通する点があるからこそ、コラムに綴っています。
その意図は、次回作の自身のエピソードで明らかにしていきたいと心に誓っています。
終