TOPページ>恋愛コラム>第三十七回 「本気で死を選んだその先には-片思いから壊れていく心-後日談-」
1月29日 1時30分執筆
第三十七回 「本気で死を選んだその先には-片思いから壊れていく心-後日談-」
四回にわたる私の体験談はいかがだったでしょうか。
本来ならば前回で”最終編”と銘打った手前、これ以上話を広げる必要もあるのかと思われるかも
しれませんが、”彼女”との再会から完全な離別までの過程を描ききれていなかったので、コラムの
全体的な流れを見て、真の完結部分を除いてしまっては完全燃焼出来ていないと気づいたのです。
そこで、彼女に2回目の告白をしてから一方的に距離を開いて四ヵ月後、自分から電話をかけた後から
さらに二ヶ月後に再会し、三度目の告白を行ってその結末までの出来事を逐一語っていきたいと思います。
正直忘れかけてた。
数ヶ月ぶりに聞いた彼女から告げられた絶望の一言。
信じたい、信じたくない。正常な判断力をかけていた私ですが、今まで私に見せてくれたあの素直
で純粋なやさしい彼女が、あの時かけてくれた数々の救いの言葉や笑顔を与えてくれた彼女の真の姿
が”魔性の女”であったとは認めたくはありませんでした。
あの時あの瞬間は偽りのない事実だった。
間近で見てきた自分だからこそ彼女がそんな冷酷な人間なはずはない。
私は日々襲ってくる欝やトラウマに苛まれながらも、彼女に対して信じる心を忘れてはいませんでした。
時間は止まることを知らず、二ヶ月が経ち、季節は夏へと移り変わり私は大学三年生になっていました。
その間大きく変わったのは彼女が社会人になったこと。
四月に短大を卒業し、地元を離れ一人暮らししながら会社通いになることになった彼女と私の間には
相変わらず沈黙の時が流れていました。
今彼女は何をしているのだろうか。
社会に進出することで、彼女のような純朴な人柄につけこむ人間はいないだろうか。
彼女と彼氏はあれからどうなったのだろうか。
一人暮らしで寂しくないのだろうか。
自分のことを覚えていてくれているのだろうか。
想像の世界で彼女の生活模様を描き、煩悶する日々は積もり、我慢の限界を迎えた
自分は、時を越えてまたメールを送ってしまったのです。
すごい久しぶり!社会人になってどう?
刹那な時間の中で蘇るあのドキドキやワクワクが、今の私には新鮮で甘酸っぱくて
仕方がありませんでした。
そう、この気持ち、あの頃の自分に舞い戻ったようでした。
彼女からはすぐに返信がきました。
久しぶり!日々新しいことの連続だけど、頑張ってるよ。
たかは元気?
四ヶ月前に感じた確執は杞憂であることが実感できたのと同時に、
我慢に我慢を重ねてきた毎日がようやく報われたような気持ちになりました。
また、これから再開できる。
冷却期間の後はチャンス到来。
それから彼女とはちょくちょくメールや電話を交わすようになり、
気が付けばあのわだかまりが幻であったかのようにお互い胸襟を開いて話せる
間柄になっていました。
たとえ社会人になってもあの頃の彼女となんら変わりはなかった。
相変わらずの彼女の喋り口調を聞いて、親近感が私の心を満たしました。
盛夏にめぐり合えたこの奇跡を噛み締めながら、彼女に会えるのもそう遠くはない。
そう確信していたのです……
しかし、環境は確かに人を変えつつありました。
輪廻転生。
そしてまた繰り返す黒歴史。
こんばんは。たかに恋愛相談していい?
青天の霹靂でした。
昼から夜まで9時間労働のアルバイトを終えて、ようやく帰宅した直後に届いた彼女からの声。
咄嗟に私の脳裏に浮かんだのは二つの疑惑。
彼氏とのことを言っているのだとすれば、まだ別れていなかったのか。
彼女の意思は変わってなかった。やっぱり自分は完全に友達として線引きされてしまったのか。
両方の答えが次の返答ですぐ分かりました。
今、会社の上司に恋をしているんだど、遊ばれちゃうかな?
ちなみに前の彼氏とは半年前くらいに別れたんだ。
いつかみた現実。
彼女によると、同じ会社の10歳年上である上司のことを好きになったのが一ヶ月くらい前の話で、
その上司曰く結婚を前提に付き合っている遠距離恋愛中の彼女がいる。交際期間は四年くらい。
最近はお互いマンネリ気味らしく三ヶ月くらい会ってもいないし、連絡も控えているらしいとのこと。
そしてその上司の全てを理解した上で、彼女はここ最近毎週必ず彼と二人でデートをしているという。
長く付き合っている彼女がいるのをわかってて会ってはいけないのだけれども、会ってしまう。
会えば会うほど気持ちは昂ぶっていって、彼から離れられない自分がいる。
彼は自分の気持ちを知っているはずなのに、デートが終わった後に抱きしめて「離れて欲しくない」
と真剣な眼差しで囁いてくるそうなのです。胸が締め付けられる想いで立ち止まっている彼女。
彼女と彼氏は別れていた。
彼女は新しい男性との恋路を進んでいる。
新しくわかった新事実。それよりも私には彷彿してやまない点がありました。
今こうして悩み苦しんでいる彼女は、まさにあの頃の自分の投影だということを。
それから彼女はその彼と離別を選びました。
彼が彼女を失いたくないために、何度も電話をかけてきたそうです。
それでは心を鬼にして彼女は決して出ませんでした。
彼女は自分以外の第三者(上司の彼女)を傷つけてまでも幸福を手に入れたいとは思えなかったのです。
彼氏もちの女性ではなくてフリーである。
私が待ち望んでいた結果が目の前に見えている。
それでも私ももう目を覚まさなければいけない。
この時本当に自分が進むべき道がようやく見えてきたような衝動を覚えました。
その心の変化をもう一人の自分が冷静に見据えていました。
全てを終わらせよう。
未来永劫に終止符を。
暮れなずむ夕刻に、私は彼女と10ヶ月ぶりに再会を果たしました。
彼女が美容院に寄ってから会うので時間が遅くなってしまうとのことでしたが、
私は話すことはすでにひとつだけに決まっていたので問題はありませんでした。
そして落ち合った場所は地元の公園。
決め細やかな美しい化粧で肌は覆われ、髪は雑誌モデルのような形状記憶パーマをかけていて
落ち着いたファッションで身を包んだ彼女はすっかり大人の女性に様変わりしていました。
エステにも月1回通いながら自分の給料でしっかりとアフターファイブを楽しんでいる彼女の姿は
かつて同じ職場で学生の観点から切磋琢磨しながら働いていた者同士とは思えませんでした。
話って……何?
セミたちの声が木霊する中、単刀直入に私の想いを伝えました。
彼女のことを今でも好きだというそれだけのこと。
あの空白の時間を経てもそれでも想いは変わらないということ。
自分なら絶対この先いつまでも彼女を大切に出来るということを。
はじめて出来た面と向かっての告白。
もはや緊張とか恥じらいとかそういう些細な感情はありませんでした。
この冷却期間の数ヶ月、ひたすら守り続けてきた片思いを解き放ちたい。
私は蓄積してきたひとつの想いを溢れんばかりに彼女に届けました。
……
沈黙が訪れました。
電話とは違って、リアルな彼女の横顔を眺めることが出来る自分。
ようやく言えた。ようやく彼女に伝えられた。
そんなことを考えているうちに、彼女が語りはじめました。
正直、今でもまだ私のことが好きだとは思わなかった。
こんな経験もはじめてだし、とにかくうれしい気持ちでいっぱい。
でも、やっぱり友達として見てきたから……
話の途中でしたが、私は引きませんでした。
ここで自分が折れてしまったら、もう二度と先には進めないような気がしたのです。
一人の時間の長さ、過去に味わった強烈な後悔や自己嫌悪が逃げようとする私を牽制しました。
それでも付き合ってみないとわからないじゃん。
それって固定観念かもしれないし、これからお互い意識して会ったりを重ねるうちに
考え方も変わるかもしれないし。だから答えは保留でいいから自分の気持ちを知った上で
スタートを切ってみない?
彼女はまたもうつむいて考えこんでしまいましたが、結局私の追い討ちに観念したのか、
私の意図を飲み込んだようでした。
わかった。
今すぐたかを恋人とは思えないけれど、確かにわからないかもしれない。
すっかり景色はうす暗くなっていて、彼女に気持ちに話すことに夢中で時計を見ていたら
1時間が経っていました。
そして、これが彼女と過ごす最後の時間になったのです。
3日、5日、1週間が経っても彼女から連絡がくることはありませんでした。
その間私から彼女にアプローチすることもなく、ただ何もない時間だけが過ぎていきました。
あの晩に、私は彼女のメモリーを一瞥して、次の瞬間ためらいもなく削除していました。
1年間私の携帯に絶えず記録されていたその思い出は、あまりもあっけなく消し去りました。
これで完全に終わった。
今まで幾多の岐路を迎えた来ましたが、今回の私は心の底からそう直感していました。
それから二度と彼女と会うことも連絡を取ることもありませんでした。
何が正しくて、何が理想で、何を選べば望みどおりの未来に進めたのかはわかりません。
自分の殻を覆いつくす虚無の世界は全て錯覚だったのかもしれません。
永すぎた春でした。
ずっとずっと私は求め続けてきました。
行くあてのない彼女の背中を暗中模索しながら、ひたすら歩いてきました。
どこからか私の仲間たちが「こっちにおいで、こっちにこい」と往々にして声を唱えてきました。
それでも私は見てみぬふりをし、盲目になりながらも彼女の偶像を追うことだけを視界に、
突き進んできたのです。
そしてようやく手に入れた現実。
どこか想像していた真実。
私はもう疲れ果てていました。
全てを理解し、素直に受け入れ、それを止めたのです。
それから間もなく果てしなく広がる闇の世界に再出発するわけですが、
久しく止まっていた古時計は静かに時を刻みはじめ、私はまた旅立ちました。
私は今でもあの選択を後悔はしていません。
自分の素直な心に従って、救ってあげたのだから……。
完
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