TOPページ恋愛コラム第三十五回 「本気で死を選んだその先には-片思いから壊れていく心-後編」 

                                                                   1月1日 18時45分執筆

   第三十五回 「本気で死を選んだその先には-片思いから壊れていく心-後編-」 

      
     隆のことは忘れません。 ありがとう、そしてさようなら。

    

    そこには静寂を突き破り、全ての終焉を迎えるメッセージがありました。

    彼女からそのメールが届いたのは、翌朝の9時頃。
    私の長文に合わせるかのように、2通に渡って送られてきました。
    そして最後に記されていたのは、どこか想像していた、本当は先輩から初めてあの話を
    聞かされていた時から脳裏につきまとっていた事実。

    私はそのメールを何度も読み返し、心の中に芽生える虚しさと失望感は
    筆舌に尽くし難いものでした。
    苦しみから解放されたいが故の行動が、結果として更なる苦痛を生み、取り返しの
    つかない暴動を引き起こしてしまった。
    もはや今の自分には正常な思考力は消えうせてしまっていました。
    
    たった数通のメールで、今までの彼女とのあの思い出全てがNOに変わってしまい、
    ENDを作り上げたのも手元に握り締められている携帯そのものでした。
    
    今まではいったいなんだったの。二人の関係はこんなものだったのか。
    こんな終わり方はいやだよ……。


    どうしようもない衝動が落ち着いた今、そこに残った虚無感から生まれるものは何も
    なかったのです。それと同時に、恥もプライドも必要ない、どうしてもこんなことで彼女と関係を
    終わらせたくないという念に襲われたのです。
 
    気がつくと、私は彼女と今まさに亀裂が入ったしまった間柄を何とか復活させようと必死になって
    いる自分がいました。その想いは、皮肉にも”メール”に託すほかなかったのです。

    
    



    それから半年の月日が流れました。

    あの日のまま、動くのを止んでいる凍った心が私を生かしていました。
    彼女とはあれから一度も会う事も、電話することもなく、二人の関係は完全に疎遠になっていました。
    
    あの時、あの瞬間から、私は常に自責の念に駆られていました。
    一人になって彼女を想う時間で毎日を支配され、いかに自分が身勝手で、傍若無人な言動を
    取ってきたのか、今更になって冷静に気づいたのです。
    
    彼女は私の最後のメールに対して次のように述べていました。

  
    私はまたいつかお互い笑って会える日がやってくると思う。
    その日が来るまで、お互い成長して、前を向いて歩いていく必要があるんじゃないかな。


    寂しさでどうしようもなくなった時、いつもこの保存メールを目にしては、自身を鼓舞してきたのです。
 
    いつかまた会える。また彼女と会える日が来るんだ。
    自分自身がもっと強くなって魅力的になれればまた新しい未来を築くことが出来るんだ。
   

    この半年の暗闇の中で唯一私を救ってくれたのは紛れもないその言葉でした。

    そして私はいつかまた訪れるであろう彼女との再会に向けて、あの日までの自分とは変わった
    強い自分になるために、本を読んだり筋肉を鍛えたり、ファッションに力を入れたり、自己鍛錬に
    尽力していたのです。


    しかし、そんなかすかな希望は一瞬にして絶望へと塗り替えられてしまったのです。

    
    私は彼女と距離を置いてから一日たりとも彼女を忘れる時はありませんでしたし、
    「今日で離れて○○日目」というカウントも欠かさずにしていました。
    いくら希望的観測を抱いていたとはいえ、先の見えない不安の方が勝っていたので、自分の中で
    期限を作ることで、何とか自分を取り持っていたのです。

    あと一ヶ月我慢すれば、彼女と会えるかもしれない。

    なんの保証もない猶予期間に身を置いていた自分は、彼女から唯一連絡を取ることが出来た
    携帯電話を毎晩毎日のように見つめながら、その一瞬を待ちわびていました。
    しかし、半年も経った今、彼女から送られてくるかもしれないメールに待ち疲れた自分は、
    6ヶ月というキリのいい境目をきっかけに、思い切ってメールを送ることにしたのです。

    自分で言うのもなんだけれど、この半年で自分はかなり変わった。
    あの日のように余裕が無かった自分とはもう違う。
    いまの自分なら彼女と連絡取るのに相応しい人間になっただろう。

    緊張の中でこれまでの自分を振り返ることで、一歩踏み出す勇気を見出そうとしていたのです。
    散々考え倦んだ結果、シンプルに「久しぶり!最近どう?」メールを送ることにしました。

    そして意を決して送信したのですが、返信はすぐに返ってきました。






    送信先が見つかりませんでした。






    蘇るあの瞬間の虚脱感。
    いつかまた会える日がくる。もっと強くなりたい。
    その先にはまたあの日の関係に戻れた二人がいるから……。

    その思いだけで今日まで生きてきました。
    私はディスプレイを見つめながら奮い立つ全身に歯止めをかけられず、
    彼女に電話をせずにはいられませんでした。
    
    きっと新しいアドレスを知らせるにも気まずくて送れなかっただけに違いない。
    あの彼女だから何か理由があるはずだ。

    取り乱そうとする自分を必死に激励しながら、それでも事実を確かめるため、
    電話をかけていました。

    幸いなことに、電話番号は当時のまま繋がり、彼女はすぐに出ました。
    しかし、これもまた描いていた一つの現実のように彼女は誰がかけてきたか
    わからないようでした。私のデータは消されたいたようなのです。

    私の声を聞いて、すぐに思い出したようでしたが、冒頭に彼女から忘れもしない、
    この半年間全てを否定されるような一言を告げられました。

    正直隆のこと忘れかけていた。

    
    私の中の全てが崩壊したような幻覚を覚えました。
    この半年間一度たりとも彼女のことを忘れた瞬間はない。
    未来をアシストしてくれたのは他でもない彼女じゃないか。
    一体自分のしてきた事はなんだったのか。

    あいのりを見ている時も、不器用な青年が意中な相手に告白している
    姿に自分を投影し、彼女に自分の存在を再認識してもらえないかと淡い期待
    を抱いている自分がいました。

    あの日の思い出の曲を聴いていても、印象的なフレーズが流れては当時をフラッシュバック
    して、悲劇のヒーローを感じていた自分もいました。
    インターネットの相談サイトに想いを投稿しては、「大丈夫だよ」と自分を肯定してもらい、
    なんとか自我を見失わずにいた自分がいました。

    しかし現実は理想とは全く違った。

    もはや全てを悟った自分は電話を早めに切り、彼女とのこれまでの唯一の思い出である
    写真、手紙やメール、録音メモを消去して深い眠りにつきました。

    今を生きる彼女。
    過去をさまよい続ける自分。

    異なる時間軸を理解した自分に残っていたものは何か、答えはNOでした。

    最終編に続く
    
  
    

          

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