TOPページ恋愛コラム第三十三回 「本気で死を選んだその先には-片思いから壊れていく心-前編」 

                                                                   12月28日 2時00分執筆

   第三十三回 「本気で死を選んだその先には-片思いから壊れていく心-前編」 

      
       隆さん私もう消えてなくなりたい。
      隆、俺死にたいわ。
      自分なんか生きる価値ないわ。


      23年の人生の中で出会ってきた私の大切な支えが、心に訴えかけてきた痛切な叫びです。
      気が付けば悩み相談掲示板、メール相談含めてのべ300人の方々と語り合いを重ね、
      私よりも遥かに若い10代前半の中学生や、人生の先輩でもある20代後半の女性の方
      から”生への渇望”メッセージを受け取ってきました。

      私はその言葉を聞くたびに、怒りと虚しさが入り混じり胸が締め付けられ硬直します。
      怒りの矛先は他でもない自分。他人がこんなにも苦しんでいるのに、ただ黙って諭すことしか
      出来ない無力さ、そんな現実から目を背けるかのように直視せずに逃避しようとしている弱い心。
      
      死にたい、苦しい、助けて……。私の心の中に木霊すること言葉は同時に、過去の決して
      消えることのない暗黒時代の自分を彷彿とさせられます。
      決して強くなんかない自分も、みなさんと同じように死を自ら選び、その先に進もうとした時期がありました。

      私の変えるの出来ない汚れた過去を開示することで、同じ境遇に立たされているみなさんの礎に
      なりたい。これから話すのは偽りのない闇に落ちていった他人に見られたくない”もう一人の自分”です。

 
      これまでの人生を振り返った時、本気で死にたいと思った時が何度もありました。
      その中でももっとも長い期間、深刻に死に向かって歩いて行ったのは大学3年の時。
      きっかけは”失恋”でした。それも想いが成就しないままに終わった、いや終わらせた片思い失恋。

      出逢いは19歳の時、アルバイト先で同時期に入り、年も同じということもあって共通の話題で盛り
      上がって行き、どんどん心が近づいていって、それが恋愛感情に移るのまでには時間は
      かかりませんでした。
      フィーリングが合うというのは直感で、気が付けば「この人しかいない、この人のためならなんでもできる」
      と、他の何を捨ててでも彼女の事を一途に想える自分へと変わっていました。その時の自分は若気の至り
      で周りが見えておらず、彼女のことを想い続けることで自分のアイデンティティ=存在価値を見出そうとして
      いたのです。

      そんなある日、つきつけられたのは彼女に恋人がいるという言葉に表現出来ないほどの衝撃。

      ちょうど次の休日に2回目のドライブを決めていた矢先だったので、俄かには信じがたい一言でした。

      彼氏がいた……?

      ちょうど「好きな人が職場にいるか」という話題を仲の良い先輩と話している最中のことでした。
      アルバイト中に先輩から聞いたその一言に、その場は本音(彼女を好きだという気持ち)を悟られない
      ように平然を装って振る舞い、一人になったとき仕事中にもかかわらずトイレにかけこみ、その場に
      どろどろに崩れ落ちました。

      あんなに親しくて何でも話せて彼女も自分に心を開いていたと思っていたのに、彼氏がいることなんて
      一言も口にしなかったし、あの時も平気で自分と会っていた。

      先輩によると、彼女は年上の彼氏と付き合って1年が経っており、今は関係がギクシャクしており、
      別れる別れないの葛藤を繰り返している日々だということでした。
      付き合って1年、そして7歳も年上の社会人の彼氏がいたショック、同時に情報を提供してくれた
      先輩が、自分の知らないところで彼女と一対一で電話を交わしていて、自分の知らない次元の
      やりとりを行っていた事実。
      
      さっきまであったワクワクドキドキに満ちた自分だけの世界が一瞬にして崩壊し、そこに残ったのは
      相手に対する喪失感や絶望。そして何より自分の知らないところで自分の知らない話や表情、声を
      出している彼女への猜疑心や相手への嫉妬、複雑な感情に胸が押しつぶされそうで、吐き気と全身
      を襲う倦怠感、脱力感で体が動けませんでした。

       自分はいったい何的存在なんだ。
      今まで彼女は何のために自分と接してきたのだ。
      自分は彼女にとって寂しさを埋めるための道具だったのじゃないか。

      可愛さあまって憎さ100倍。
      自分をこんなにも苦しめたのは、自分を弄んでいる彼女。
      人の優しさを逆手にとって、都合の良い時にメールを送ってきたり、悩みを話してきたり、
      まさに魔性の女だったんだ。


      憎しみと憶測は留まることを知らず、抑制できないほどやり場のない想いは膨張していました。

      彼女に彼氏がいるというのは薄々予感はしていました。
      それはそれまで出会ってきた好きになった相手がほぼ100%彼氏もちだったというジンクスも
      ありましたが、彼女の天性の人柄や、飾らない美しさに自分のほかにも好意を寄せている人間
      がいるのは当たり前だと認めていたからです。
     
      しかし好きになった手前、「自分だけを見てほしい」独占欲に駆られて、その想いには
      目を向けないようにしていただけでした。
      きっと自分の心のどこかに「彼女の一番近くにいて、何よりも理解し分かち合っているのは自分だ」
      という過信があったのも理由の一つでした。

      先輩の話を聞いて初めて知りましたが、先輩も彼女を狙っていたそうなのです。
      自分がそうしていたように誰にも干渉されずに彼女と二人きりになれたときに、自分の連絡先を
      渡して仕事が終わったあと、マメに電話をしてアプローチしており、先輩も彼氏がいることを最近まで
      知らなかったことを教えてもらいました。

      幸いといっていいか複雑ですが、彼女が彼氏と別れる別れないの優柔不断さに嫌気がさし、
      恋愛対象としては見切りをつけたらしいですが、彼女が裏でそこまで複数の男性と個人的な関係を
      築いていた事実が寝耳に水だったのです。

      一方では、感情的になって彼女への怒りで苛まれていたのとは反対に、先輩が自分の気持ちを
      悟った上で、わざと混乱させるような虚偽な情報を流してきたのではないかという疑念もありました。
      先輩には私が彼女を好きだという気持ちは話してはいませんでしたが、仕事中に彼女と二人で仲良く
      話している姿を目撃されていたので、その可能性もなきにしもあらずだと考えました。

      しかし相反する気持ちが交錯しても結局彼女へのフラストレーションの想いが圧勝し、いてもたっても
      おらず、一刻も早く彼女の口から事実を聞きたくて、いつもの仕事はまったく上の空でした。
      
      自分はただの心の隙間を埋める駒だったのか。

      現在、しばしの時を経て冷静に過去を回顧して、いかに当時の自分が自分勝手で、自暴自棄になって
      いるのかがひしひしと分かりますが、その時は客観視出来ないほど自分を取り乱していたのです。
      
      もう昨日までの平凡でも幸せだったあの日々には戻れない。

      その夜全てを覚悟した自分は、彼女に電話をかけて、先輩から聞いた真実、そして
      彼女のもう一つの世界と過去を問いただしました。
      本当のことを知ったらもう今までの関係をには戻れなくなるかもしれない。
      そのリスクを感じていながらも、偶発的に彼女の実態を聞いてしまった自分は、聞かずには
      いられませんでした。でないと自分してきたこと全てが否定されるような気がして怖かったのです。
  
      彼女は包み隠そうともせずに、あっさりと全てを認めた上で、私の問いに対して逐一説明してくれました。
      先輩の言っていたとおり、彼氏とはうまくいっておらず、この先どうしようか考えている最中であるという
      こと、先輩が自分の連絡先を書いた紙を渡してきたのがきっかけでちょくちょく電話するようになったこと、
      心のどこかでそれでも彼女を信じたい。先輩の話も幻で、また昨日までの仲良かった日々に帰りたい
      と期待している自分もいました。でも、現実は塗り替えられない。それは許されなかったのでした。

      そして追い討ちをかけるかのように、泣きっ面に蜂の一言。
   
      正直今、自分は先輩のことが気になっている。もしかしたら恋愛感情なのかな……。

      想定外の上に重なった新しい局面。
      もはや正常な理性が壊れつつある自分は、彼女の話を聞いていて激しい怒りの気持ちで覆われて
      いました。しかし、そんな反駁の念とは裏腹に、それを態度に表したら相手を傷つけてしまい、
      嫌われてしまうかもしれないという恐れから、いつもの”いい人”を演じるので精一杯な自分がいました。
 
       彼氏とは別れていないんでしょ。それじゃあ先輩とはどういう関係を築きたいの?
      もし先輩と付き合うことを望んでいるのだとしたら、その前に彼氏と決着をつけないとじゃないの?


      本当は、彼氏とも別れてほしいし、先輩への想いも断ち切ってほしい。一時の気の緩みであってほしい。
      彼女の今まで聞いたことのない怒涛の話を聞いていて、そこに”自分”の存在が全くないのに失望を
      感じながら、心はとめどなく流れてくる彼女の本音を受け止められずにはいられませんでした。

      それが今まで全うしてきた自分の役割だから。
      自分を押し殺して、彼女の傍にいられればいいじゃないか。
      そうすればまた今まで通り平穏な仲でやっていけるのだから……。

      彼女は先輩と恋愛関係にならずとも友達として繋いでいきたい、彼氏とはどうなるかわからない。
      とにかく両者をキープしておきたいということでした。

      それを聞いた瞬間、我慢に我慢を重ねていた自分の中の何かが切れました。
      
      何を都合のいいこと言っているんだ?
      先輩の気持ちも知らずに、去り行く人間を自分のエゴで取りとめておきたい?
      散々先輩には別れる、今度こそ別れようとしているといって、結局現状維持を望んでいる?
      一体何人の男を巻き込めばいんだ!!

      私は自分のことを棚において、人の気持ちも知らずに言いたい放題言っている彼女に対して
      抑えていた感情が爆発するのをもはやとめることは出来ませんでした。
      そこにはいい人も仲の良い同僚も関係なく、完全に自分の欲望で頭が支配されていたのです。

      人のことを弄ぶのもいい加減にしろ!

      この瞬間からです。どこにでもあった片思いが取り返しのつかない奈落の底へと向かっていったのは。
  
      気が付くと携帯電話を強く握りしめた自分は彼女にこう語りかけていました。
     
      「自分が何より君のことが好きなんだ。彼氏にも絶対勝てる自信がある。
      だから自分と付き合ってほしい」


      たった一日で人生がここまで激変するなんて予想もつきませんでした。
      しかし、行動を起こしてしまったその時から過去に戻ることは出来なかったのです。

      続く
      
      
      

          

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